定期借地権の種類
定期借地権は、平成4年8月に施行された「借地借家法」により誕生しました。
従来の借地権と異なり、当初定められた契約期間で借地関係が終了し更新はありません。
この制度によると、土地所有者は従来に比べ、安心して土地を貸すことができ、借り主は、従来より少ない負担で良質な住宅を持つことができます。
土地の貸借が円滑に行われることが期待でき、住宅・宅地政策上も有効な制度と見られています。
定期借地権の3類型
1.一般定期借地権借地期間を50年以上としたもの。期間の満了に伴い、原則として借り主は建物を取り壊して土地を返還する必要があります。
2.建物譲渡特約付借地権契約後30年以上経過した時点で土地所有者が建物を買い取ることを、あらかじめ約束しておきます。買い取った時点で借地権が消滅します。
3.事業用定期借地権借地期間を10年以上50年未満とし、事業用に建物を建てて利用するための定期借地権で、居住用には使えません。
一般定期借地権 | 事業用定期借地権 | 建物譲渡特約付き借地権 |
(借地権の存続期間)50年以上 | (借地権の存続期間)10年から50年未満 | (借地権の存続期間) 30年以上 |
(権利の内容) 3つの特約が有効 ①更新しない ②建物の再築に伴う存続期間の延長をしない ③建物買取請求権を行使しない |
(権利の内容) 借地借家法の次の3つの規定を適用しない ①法定更新 ②建物再築の伴う存続期間の延長 ③建物買取請求権 |
(権利の内容) 賃貸借契約締結時に契約後30年以上経過した日に 賃貸人が借地人から借地上の建物の譲渡を受ける旨を特約し、 賃貸人が建物を買い受ける事により借地権が消滅する |
(契約期間満了時の処理) 借地人は建物を収去して更地にして返還 |
(契約期間満了時の処理) 借地人は建物を収去し更地にして返還 |
(契約期間満了時の処理) 賃貸人は、契約時に定めた時期に賃借人から借地上建物を買い取る この類型のみ建物が将来も存続する |
(契約方式) 上記3つの特約を公正証書等の書面で契約する |
(契約方式) 賃貸借契約を公正証書でしなければならない |
(契約方式) 法律上は格別の制限ない口頭でも成立可 但し、実務上は建物に仮登記を経由する |
前払地代方式の定期借地権(新定期借地権)の内容は、こちらのページをご覧ください。
一般定期借地権で3つの特約がない場合の考え方
22条の一般定期借地権については、期間50年以上の契約を書面ですることにより
①期間満了により更新の請求をしない
②建物買取り請求権の行使をしない
③建物再築による期間の延長がない
という3つの特約が有効になる旨が規定されております。
定期借地権が誕生した際に、上記3つのうち2つの特約のみをした場合に、それが有効となるか否かという議論があるようですが実務的には上記3つの特約を書面で交わすことを考えておけばよいでしょう。
不動産登記実務上はこの3つの特約を全て具備する必要があるとの解釈のもとに、この一部を排除する旨の書面が添付された場合には、定期借地権設定登記の申請を却下する扱いとされています。(不動産登記法第111条3項 だい132条2項)
事業用定期借地権の期間の延長
平成4年に創設された事業用借地権は、借地借家法が改正されて、名前も事業用定期借地権と変更になりました。改正された理由は、事業用借地権が賃貸期間を10年以上20年以下としていたことが原因です。
契約後20年で終了する事が借地権設定者(貸主)及び借地権者(借主)に不利益をもたらすケースも考えられるからです。
それで、事業用借地権は平成20年、契約期間を10年以上30年未満とする事業用定期借地権として改正されました。
さて、実務上はどの様になるのでしょうか?事業用借地権も事業用定期借地権も公正証書による契約が義務付けられています。
既存の事業用借地権の公正証書による契約を事業用定期借地権として期間の部分を延長する必要があります。貸主も借主も合意しているのですから簡単な話ですが、もう一人合意して頂かなければならないのが公証人です。
そもそも、契約期間が満了したら終了する事業用借地権を公正証書を契約期間を10年延長するとすることが法的に矛盾すると考える公証人もいらっしゃるようです。公証人によっては延長を認めない先生もいますので事前に考え方を確認してみてください。
尚、10年以上20年未満の事業用借地権を50年まで延長する契約は、10年から30年未満と30年以上50年未満では契約内容が大幅に違ってきますので公正証書を作成して貰う事は難しいようです。
事業用定期借地権の30年未満と50年未満の違い
23条借地権について
23条借地権は、具体的には2つに分けて考える必要があります。事業用定期 借地権については、法律上大きく二つに分けて理解する必要があります。具体的には「10年以上30年未満」の事業用定期借地権と、「30年以上50年未満」の事業用定期借地権です。具体的には以下のような違いがあります。
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このような違いが生じる理由について簡単に説明いたします。まず、30年以上の借地契約の場合は、普通借地契約も定期借地契約もどちらでも可能であるため、当事者の特約より、賃借人にこれらの保護が与えられないことを定めることで、普通借地権と事業用借地権を区別する必要があります。 逆に、借地借家法上、普通借地権は30年以上で契約をする必要があるため、10年以上30年未満の期間で設定できるのは、事業用借地権だけであるため、このような規定となっているようです。 |
定期借地権の活用法
事業用定期借地権
定期借地権の3つの累計で、一番多く利用されているのが事業用定期借地権です。平成4年8月の借地借家法が施行されて、借地期間が10年以上20年以下で土地所有者にとっては貸しやすく、事業者にとっては借りやすいと様々な利用が行われました。一番多かったのがガソリンスタンドでした。行政が地主さんから借地して、施設を建築した例も多くありましたが、借りる方では20以下という事で借りるのをためらった事もあったようです。
借地借家法が改正されて、平成20年1月1日以降は、30年以上50年未満という期間の契約が可能となりました。事業用定期借地権は、居住用以外は利用可能ですので行政が土地を借りて学校を建築したり、市役所などを建築する例なども出てきています。
20年で解体して更地で返還する事を考えると、建物には費用を掛けられないという事をお聞きしましたが、期間が長ければ建物にも十分な予算を掛けられますね。
事業用借地権は、公正証書による契約が義務づけられています。
事業用定期借地権で借地期間10年から30年未満の例は、こちらからご確認ください。
一般定期借地権
利用目的に制限はなく、事業用でも居住用でも良い事とされています。契約方式も事業用定期借地権が「公正証書」によることを義務付けていますが、一般定期借地権は一般の契約書で契約しても有効となっています。
しかし、契約期間が50年以上になりますので貸す側と借りている側も代替わりとなることが予想されますので、公正証書として公証人役場で保管しておいて貰うというのがお勧めです。
契約書の内容で、守らなくてはいけない部分は「契約の更新がない事」「建物築造による存続期間の延長がない事」「建物買取請求権がない」という3つの特約を入れて設定契約を締結すると、定期借地権として成立します。契約書の内容を確認したい場合は、
一般定期借地権設定契約書(戸建て・賃借権)で確認してください。
最近は、分譲マンションでの利用が多いようで、フランス大使館の敷地内のマンションも東京都がと都有地を定期借地権マンションとして分譲した「シティータワー品川」や「むさしのIタウン」の人気は記憶に新しいですね。
その他、お寺や神社といった土地を簡単に売却できない法人の定期借地権による利用が多いようです。
大きな物件では、ナゴヤドームなども定期借地権を利用する事でチケットを安くする工夫をされているようです。合わせて、高齢者施設や病院なども利用が多いようです。多額な借金をしたくない地主と、土地を買う事で初期投資を多くしたくない法人との思いが合致しているようです。大きなショッピングモールの利用も多くなってきている事も背景は同じなのでしょう。
建物譲渡特約付借地権
借地権の存続期間を30年以上に設定し、契約期間終了後、地主が借地人から建物を買い取ることで、借地権が消滅する借地契約。登記の必要はなく、所有権移転または所有権移転請求権の仮登記を必要とします。法律上は契約は書面に定めておく必要はありません。
ただし、30年後に契約が実行されることを考えると、契約書に記載しておくことが望ましいでしょう。相続土地活用研究会としては、公正証書をお勧めしています。
建物の譲渡
建物譲渡特約の設定方法は「確定期限付売買契約」と「売買予約契約」の二つがあります。
1.確定期限付売買契約
契約が満了する30年後以降の特定日を予め設定し、その日に買い取りを実行する前提で、借地契約と売買契約を同時に結ぶ方法です。
2.売買予約契約
契約が満了する30年後以降に建物の売買契約を行うとした売買予約契約を借地契約と同時に結ぶ方法です。
建物譲渡特約付借地権の活用法
土地の所有者は、土地を借地人に貸すことで「地主」として30年間、時代や保証金などの収入を得る音が出来ます。最近では、定期借地権付き分譲マンションや社宅やオフィースビルなどでの利用もあります。
地主として、注意しなければならない事は入居しているまま、建物を買い取るので古くなった建物の修理代や解体費用は地主もちとなることです。
法人が地主から土地を借りて、賃貸住宅を経営を行い30年後に入居者付きで買い取るというケースですが、空室リスクや修繕リスクなどを地主に負わせて、法人が良いとこどりをするケースには充分に注意してください。
建物譲渡特約付借地権の設定契約書の例はこちらからご確認ください。