定期借家権の活用法

定期借家権による土地活用

定期借地権による土地活用は多様化してきています。
ドクターが医院を開院するには、通常の場合は土地を購入して建物を建築するといった手法が取られています。建築した場合の設備費の金額も相当の費用が必要となります。

金融機関は、大学病院に勤務する医師に融資をするでしょうか?答えはNOです。患者数も把握できない状態では、多額の融資は難しいです。ドクターの開院にはハードルが高いのです。
地主さんとしては、地域のためにもなるし、土地の有効活用として医院を誘致したいというお考えがありますが、ドクターの希望のプランで建築して、賃貸をしてもローンが完済しないうちに途中で出て行かれたら負債だけが残ってしまいます。

こんなケースに使えるのが「定期借家権」です。例えば、契約期間を25年として賃貸借契約を行えば、途中で出て行かれる危険はなくなります。
契約期間内に使わなくなっても賃料を受け取り続けることが可能となります。同条件で賃借人が決定した場合は、残存期間で賃貸するか? 定期借地権で新たに年数を決めて契約することも可能です。

定期借家契約と普通借家契約の違い

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定期借家契約は、契約で定めた賃貸借期間が終了すると借家契約も終了し、借家人は退去しなければならないとする契約。原則として契約の更新は出来ず、再契約には貸主・借家人双方の合意が必要となります。居住用建物だけでなく、営業用建物にも適用されます。

定期借家権は、平成12年(2000)より導入しましたので、平成12年以前の賃貸借契約は普通借家契約となります。
図を見ていただくとわかりますが、契約の仕方は書面を義務付けているのと、口頭でもよいとする違いがあります。
一番重要なのは、更新の有無の部分です。普通借家契約の場合には、契約期間が終了しても、賃貸借契約の更新を賃借人が望む場合は賃貸借契約を終了することが出来ません。
裁判で争った場合に、貸主側が賃貸借契約の終了を主張できるのは、現賃借人よりも貸主が賃貸借物件を使用する必要が認められる場合です。この正当事由制度が高額な立ち退き料を必要としているのです。

借主からの中途解約の可否の部分も大きく違っています。普通借家契約は、事前に転居することを申し出ればペナルティーはありません。
定期借家契約は、契約期間内に中途解約する場合は、介護や療養や転勤といった理由がないと認められません。賃貸人は契約期間内は賃貸することが義務つけられて、賃借人は借りることを義務つけらえるというとてもバランスの取れた契約形態となっています。

普通借家契約の更新時に、定期借家契約に変更するのは認められていませんので注意が必要です。

定期借家契約を活用した、合法的立ち退き問題の解決方法は後ほど解説します。

定期借家権を活用した不良資産の対策(入居率の悪い賃貸住宅)

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地主さんがの所有している不動産について、不良不動産の代表例として、入居率の悪いアパートがあります。このままだと売ることもできないし、建て替えて有効活用をするとしても立ち退料や交渉の事を考えるとそのままにしておくという選択をする方は多いです。

合法的に立ち退き交渉する場合には、自分で入居者と交渉するか、代理人に頼むという方法となります。気軽に不動産業者に依頼する地主さんもいますが、法律違反です。

権利の調整に関しては、弁護士しか代理人になれません。しかし、弁護士に依頼するとなると、高額な立ち退き料と弁護士費用の負担が大変です。
私の経験値でいえば、立ち退き料は新しく引っ越す所の家賃の10か月分は必要となります。同じ条件のアパートを借りるのに掛かる費用は、一般的には、礼金2か月、敷金1か月、前家賃1か月、不動産手数料1か月プラス引っ越し費用といったところです。8万の家賃とすると5か月分で40万円。引っ越しはピンキリですが、ファミリーでお任せパックで30万位でしょう。借りている側からすれば、手間を考えたら80万円位は要求したくなるところでしょう。
家賃も滞納せずに入居しているのに、大家さんの都合で引っ越しをするわけですから理解できます。

合わせて、弁護士費用ですが、私の経験からいうと弁護士は現地に行って入居者と話をすることは、ありません。得意の文書攻撃で入居者とやり取りをするので時間ばかりが過ぎてしまいます。その分、弁護士費用は膨らんで行きます。80万の立退料ですと、40万の弁護士料を請求することも考えられます。
弁護士が得意とするのは、賃料の増額請求訴訟です。家賃を値上げしてくれと訴訟を起こせば時間も費用もたっぷりかかって弁護士にはおいしい仕事になります。しかし、裁判で家賃の値上げを認めさせるのはハードルが高いです。

さて、今回ご案内したいのは、立ち退き料を支払わずに弁護士に頼まずに円満に立ち退きをする方法です。
それには、定期借家権を活用します。203号室の入居者に101号室に引っ越していただく。
現在の家賃の6万円を3万円として、新たに定期借家契約を行うというものです。入居者は2年間で72万円分の節約が出来ます。大家さんは、72万円の減収ですが、立ち退きの大変さを考えれば納得できると考えます。勿論、取り壊すために空けてある部屋も2年契約で定期借家で新たに貸すことも可能ですので、減収部分は回収できる可能成があります。
何故、部屋を移ってもらうかと言えば、普通借家契約から定期借家契約に変更することは消費者保護の観点から認められていないからです。同一契約者と同一の場所は、認めらていないので、契約する部屋を変更していただくのです。
全室が、定期借家契約としてあれば、契約期間が終了すれば全員が立ち退くことが決定していれば売ることも可能となります。新しい部屋への斡旋であれば不動産業者の業務となります。
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